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2017年02月3日  2021年09月28日

認知症、特にアルツハイマー病を予防するための食事法:3つのポイントを詳細解説

認知症、特にアルツハイマー病を予防するための食事法:3つのポイントを詳細解説

認知症と診断される人は年々増え続けています。認知症は発症する20年ほど前からすでに脳内で変化が始まっています。「認知症に絶対なりたくない」と思う方は今すぐ対策を始めましょう!今回は認知症予防における食事のポイントについてまとめました。

 

1.糖分を控え、バランスのとれた食生活を心がける

 

過剰な糖分はタンパクと結合し、血管や組織を傷つける物質に変化して老化を促進してしまいます。また、糖分の過剰な摂取は肥満や糖尿病、高脂血症などにつながりますが、こういった生活習慣病があると認知症になりやすくなることがわかっています。特に、代表的な認知症であるアルツハイマー病では、高血糖状態が続いてインスリン抵抗性(インスリンの機能低下)が生じると、アルツハイマー病の脳に多くみられる老人斑が形成されやすくなります。

 

糖分による害を防ぐためには、血糖値の急激な上昇を避けることが必要です。まず砂糖の入った甘い食べ物や飲み物は控え、空腹時にご飯やパン、麺類だけ食べることは避けるようにしましょう。また、食事の際の食べる順番も重要です。血糖値を上げないコツは、最初に野菜・海藻・きのこなどを食べ、次に魚や肉などのおかず類、米や麺類などの炭水化物は食べないか、最後に少しだけとるようにしてください。このようにすると同じものを食べても血糖値の上昇がゆるやかになります。

 

タンパク質は魚や肉、卵、乳製品、大豆製品などから体重1キロあたり1グラム以上を目安に毎食とり、筋肉の衰えを防ぎましょう。一度に大量に食べても消化しきれませんので、毎食必ずタンパク質を含む食材をとるようにしてください。

 

油はオリーブオイルがベストです。できればエキストラバージンオリーブオイルを選んでください。オリーブオイルはLDLコレステロールを下げるオレイン酸が多いのですが、エキストラバージンオリーブオイルだとさらに認知症予防に役立つ「オレオカンタール」という成分が含まれています。

加熱調理には熱で劣化しにくいココナッツオイルがおすすめです。香りが苦手な人もいますが、現在では使いやすい無香の製品もあります。ただし、揚げ物は避けてください。

 

2.地中海食や和食は認知症予防にも良い

 

1960年代のギリシャやイタリアの食事がベースになっている「地中海食」という食事スタイルがあります。具体的な内容は、チーズ・ヨーグルト・オリーブオイル・フルーツ・豆やナッツ・野菜・パスタ・ライスなどの穀類・イモを毎日、菓子・アイス・卵・鶏肉・魚は週1〜数回、赤身の肉を月1回〜数回摂取し、赤ワインを毎日適量飲むといったものになります。地中海食によって認知症のリスクが下がるという研究結果は数多く、たとえば米国のアルツハイマー病(代表的な認知症の一つ)194名と健康高齢者1790名の食生活を対比した研究では、発症のリスクが半減することがわかりました[1]。さらに、最近では地中海食と高血圧を予防するDASH食という食事法を組み合わせるとより効果的であったという報告もされています[2]。

このような地中海食は私たち日本人には馴染みがないものですが、地中海食の内容は、伝統的な和食と似通っている部分もあります。そこで、日本ではどのような食事をしている人が認知症になりにくいのか調べたところ、やはり和食中心の食事をしている人は認知症になりにくいことがわかりました[3]。ですので、普段から野菜や魚、豆、味噌や納豆などの醗酵食品を豊富に使用する和食スタイルの食事が多いという人は無理をして地中海食に合わせる必要はありません。

 

3. 認知症予防に役立つ食品と栄養素

 

以下のような食べ物に含まれる栄養素は、認知症予防に効果がありますので、積極的に取り入れていきましょう。食が細い人、食生活が偏りがちな人はサプリメントや健康食品などをうまく活用していきましょう。

 

青魚 ― ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)には炎症を抑える作用や脂質の代謝を改善する作用があります。特にDHAは神経細胞の膜を柔らかくし、機能を改善するほか、アルツハイマー病の原因物質が脳に沈着するのを防ぐ働きがあります[4]。

野菜や果物(果物は糖分を含むため、控えめに) ― ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB群、ポリフェノール、食物繊維:ビタミンCとEは抗酸化作用、ビタミンB群は神経の働きを改善し、ホモシステインという神経を障害する物質を分解するために必要な栄養素です。ポリフェノールには様々な種類がありますが、多くは抗炎症作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用があり、老化予防に役立ちます。

緑茶、赤ワイン、アーモンドの皮、クミン― カテキン、レスベラトロール、クルクミンなどのポリフェノール:アルツハイマー病の原因物質が脳に沈着するのを防いだり、神経を保護する働きがあります[5-7]。

ココナッツオイル― 中鎖脂肪酸という脂質を多く含み、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用、ミネラル吸収促進作用などが報告されています。特筆すべきは中鎖脂肪酸が体内でケトン体という物質に変換されやすいということです。ケトン体はブドウ糖とならび脳のエネルギーになれる物質です。認知症、特にアルツハイマー病では脳が糖をうまく使えずに慢性的なエネルギー不足になっているため、中鎖脂肪酸を摂取するとケトン体が体内で作られ、脳のエネルギー不足が解消されて症状が改善することがあります[8]。

 

エクストラバージンオリーブオイル―オレイン酸、オレオカンタール:オレイン酸は参加されにくい油で、脂質代謝を改善する作用があります。オレオカンタールはエクストラバージンオリーブオイルから抽出された、かすかにピリリと刺激のある味の天然有機化合物です。抗炎症作用、抗酸化作用の他、アルツハイマー病の原因物質が脳に沈着するのを防ぐ働きがあります[9]。

 

以上、認知症、特にアルツハイマー病を予防するための食事法でした。こういった食事法は老化予防や生活習慣病予防にも役立ちます。ぜひ今日から始めてみましょう。

 

当院では米国発のオーダーメイド認知症治療「リコード法」を実施しています。物忘れなどの症状や、将来の認知症予防にご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

 

 

参考文献

 

  1. Scarmeas N, Stern Y, Mayeux R, Luchsinger JA. Mediterranean Diet, Alzheimer Disease, and Vascular Mediation. Arch. Neurol. 63(12), 1709 (2006).
  2. Morris MC, Tangney CC, Wang Y, Sacks FM, Bennett DA, Aggarwal NT. MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 11(9), 1007–1014 (2015).
  3. Tomata Y, Sugiyama K, Kaiho Y, et al. Dietary Patterns and Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study. J. Gerontol. A Biol. Sci. Med. Sci. 71(10), 1322–1328 (2016).
  4. Lim GP. A Diet Enriched with the Omega-3 Fatty Acid Docosahexaenoic Acid Reduces Amyloid Burden in an Aged Alzheimer Mouse Model. Journal of Neuroscience. 25(12), 3032–3040 (2005).
  5. Rezai-Zadeh K, Shytle D, Sun N, et al. Green tea epigallocatechin-3-gallate (EGCG) modulates amyloid precursor protein cleavage and reduces cerebral amyloidosis in Alzheimer transgenic mice. Journal of Neuroscience. 25(38), 8807–8814 (2005).
  6. Wang J, Ho L, Zhao Z, et al. Moderate consumption of Cabernet Sauvignon attenuates A neuropathology in a mouse model of Alzheimer’s disease. The FASEB Journal. 20(13), 2313–2320 (2006).
  7. Lim GP, Chu T, Yang F, Beech W, Frautschy SA, Cole GM. The curry spice curcumin reduces oxidative damage and amyloid pathology in an Alzheimer transgenic mouse. Journal of Neuroscience. 21(21), 8370–8377 (2001).
  8. Henderson ST, Vogel JL, Barr LJ, Garvin F, Jones JJ, Costantini LC. Study of the ketogenic agent AC-1202 in mild to moderate Alzheimer’s disease: a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial. Nutr Metab (Lond). 6(1), 31 (2009).
  9. Abuznait AH, Qosa H, Busnena BA, Sayed El KA, Kaddoumi A. Olive-Oil-Derived Oleocanthal Enhances β-Amyloid Clearance as a Potential Neuroprotective Mechanism against Alzheimer’s Disease: In Vitro and in Vivo Studies. ACS Chem. Neurosci. 4(6), 973–982 (2013).

 

2021年9月28日 改訂

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