不安障害
不安障害とは
人間が生きていく上で、ほどほどの不安を感じることはとても大切です。不安があればこそ、危険を避けたり、準備したりすることができ、安全が確保されるからです。しかし、その不安がいき過ぎてしまうと、毎日の生活に支障をきたすようになります。不安を警報機にたとえるなら、一日中鳴り続けていたり、とんでもない時に鳴り響いたりするようなものです。具体例を挙げれば、下記のように、いき過ぎた不安を感じるようになった状態を「不安障害」と言います。
- 急に体調が悪くなるといけないから、電車に乗らない
- 事故が心配だから、飛行機に乗らない
- 家を留守にするのが不安だから、外出しない
不安障害はこうした「過度な不安症状」の総称であり、不安障害に含まれる個々の疾患を挙げれば、以下に取り上げるようなものが知られています。
パニック障害について
パニック障害とは
パニック障害は、突然起こる激しい動悸や発汗、頻脈(心拍数が増加している状態)、震え、痺れ、息苦しさ、胸部不快感、冷や汗、めまいといった身体的な症状に加えて、「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどの強い不安感に襲われる疾患です。この発作は、「パニック発作」と言われ、その多くは20~30分くらい、長くても1時間以内には治まります。パニック発作を起こして救急車で病院に運び込まれたりもしますが、医師の診察を受ける頃には発作は消え、心電図や血液検査などをしても異常は認められません。パニック障害は、検査をしても身体的な異常が見当たらないのに、こうした発作を繰り返す点が特徴的です。似た症状を呈する疾患に過換気症候群や甲状腺疾患、不整脈などがありますので、それらとの見分けも大切になってきます。
パニック障害の3大症状
前記のようなパニック発作を何度も繰り返すうちに、再び発作を起こしたらどうしようかという、パニック発作に対する強い恐怖感や不安感が生まれてきがちです。これを「予期不安」と言います。予期不安は、逃げ場の無いような場所で症状が起きたらどうしよう、発作を他人や大勢の人に見られたら恥ずかしい、といった不安や恐怖を生み、大勢の人が集まる場所などを避けるようになります。
これが、「広場恐怖(外出恐怖)」です。「パニック発作」と「予期不安」、「広場恐怖」はパニック障害の3大症状と言われる特徴的な症状で、この3つの症状は、悪循環を形成してパニック障害を悪化させがちです。パニック障害が悪化すると、行動半径が狭まったり、人前に出るのを嫌って閉じこもるようになったりし、通常の社会生活が営めなくなります。また、うつ病を併発するケースもあります。
パニック障害の治療
パニック障害に対する治療の基本は薬物療法です。抗うつ薬や抗不安薬などが、個々の患者さんの病態に合わせて処方されます。また、不適切な考え方や行動を修正していく「認知行動療法」や、心身をリラックスさせる方法を身につける「自律訓練法」などの精神療法が併用されることもあります。こうした治療を行いながら、少しずつ行動範囲を広げていくのが一般的な治療の流れになります。
社交不安障害について
社交不安障害とは
例えば結婚式でスピーチをする時や朝礼の場で話をする時など、大勢の人前に立った際の緊張・あがりは誰にも経験があるでしょう。通常であれば、それはごく自然な感覚なのですが、このような状況を恐れるあまり、その状況を避けようとして会社や学校に行けないなど、日常生活に支障をきたすようになると、それは社交不安障害(社会不安障害)という心の疾患であり、治療の対象になります。
社交不安障害の症状
- 人前で
-
- 異常に緊張する
- 手足、全身、声の震えが出る
- 顔が赤くほてる
- 脈が速くなり、息苦しくなる
- いつもよりたくさんの汗をかく
- 繰り返し吐き気がする
- 口がカラカラに渇く
- トイレが近くなる、または尿が出なくなる
- めまいがする など
社交不安障害の原因
社交不安障害の原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、恐怖症状を抑える働きのある神経伝達物質である「セロトニン」が不足してしまうことが発症の原因ではないかと考えられています。セロトニンが不足する要因としては、過去に人前で恥ずかしい経験をしたことがあるなどの「経験的要因」、他人の目を気にし過ぎる、人見知りなどの「性格的要因」、また「遺伝的要因」などが挙げられています。また、セロトニンと同様にドーパミンという神経伝達物質が不足することも不安を誘発すると推測されており、神経伝達機能が正常に作用すれば、不安状態は発生しにくくなると考えられています。
社交不安障害の治療
社交不安障害は、主に脳内の神経伝達物質の不足や偏った考え方などによって起きると考えられています。そのため、神経伝達物質の不足を補って脳の機能を調整する薬物療法、ならびに認知行動療法によって治療を行っていきます。
- 薬物療法
- 抗不安薬や抗うつ薬を用いて治療します。薬の効果は飲み始めて1ヶ月ほどで現れてきますが、この時点で服用を止めてしまうと、再発の危険性が出てきます。症状が現れなくなっても自己判断で断薬したりせず、必ず医師の指示に従ってください。
- 認知行動療法
- 認知行動療法では、しっかりと現実に向き合えるよう、不安を抱きやすい考え方を変えたり、不安にうまく対処したり、人前での行動に慣れたりする訓練を行います。認知行動療法による治療は、数ヶ月に及ぶ長い期間を要するケースがありますが、焦らずにゆっくりと治療していきましょう。
強迫性障害について
強迫性障害とは
自分の意思に反して不安もしくは不快な考え(強迫観念)が頭に浮かんできて、それを抑えようとしても抑え切れず、またそのような考えを打ち消そうとして、無意味な行為(強迫行為)を繰り返さずにはいられなくなる心の病気です。不安が根底に存在しており、不安障害の一つに分類されます。そのような強迫症状は、つまらない、ばかげている、不合理だとは、自分でもよくわかっています。それなのに、無視しようとすると強い不安が襲ってきて、症状を抑えられなくなってしまうのです。
強迫性障害の具体的な症状(例)
- 汚れや細菌汚染を恐れて何度も手洗いや洗濯、入浴などを繰り返す。
- 窓や玄関のカギ、ガス栓、電気器具のスイッチなどを何度も何度も確認する。
- 誰かに危害を加えたのではないかと心配になり、通って来た道を戻って確認する。
- 自分の決めた回数や手順に沿って物事を行わないと不安になり、それに従う。
- 物の位置や左右対称性、数字などにこだわりがあり、それから外れると不安になる。
強迫性障害に気づいたら
上記のような強迫症状は、うつ病、統合失調症など、他の精神疾患でも見られるため、それらとの鑑別も大切です。専門的な診断や検査が必要になりますので、心の病気を専門に扱う医療機関を受診してください。なお、家族をはじめ身近な人は「なぜ、そんなつまらないことを気にするのだろうか」と理解に苦しむかも知れませんが、どうしようもなく気になること自体が病気なので、そんな患者さんの気持ちを理解してあげてほしいものです。
強迫性障害の治療
治療法には、主に薬物療法と精神療法があります。
- 薬物療法
- 薬物療法としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が用いられ、症状が重いケースでは、少量の抗精神病薬が使われることもあります。
- 精神療法
- 「曝露反応妨害法」と呼ばれる、一種の認知行動療法が有効と言われます。患者さんを、あえて強迫症状が出やすいような場面に直面させ、しかも強迫行為を行わないように指示し、不安が自然に消えていくまで、そのままとどまらせる方法です。強迫性障害においては、薬物と同等か、それ以上の効果があると考えられています。
クリニック概要
医療法人社団TLC医療会 ブレインケアクリニック
- 心療内科・精神科・内科
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白鳥ビル2階 - 03-4405-1899
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