2017年02月6日 2018年05月9日
認知症・アルツハイマー病を予防する運動のしかたを詳細解説
運動が重要な理由
運動は認知症のリスクを減らす、もっとも重要な要素の一つです。脳の血流を改善する・ニューロンを維持する神経栄養因子の分泌を増やす・アルツハイマー病の原因物質の沈着を減らす・肥満などの生活習慣病を予防するなどの様々なメカニズムが総合的に働いて脳の老化を防いでくれます。
フィンランドの研究では、中年期から少し汗をかく程度の運動を週2回以上、20〜30分行うことで、20年後にアルツハイマー型認知症になるリスクが約1/3に減少しました[1]。認知症の前の段階を軽度認知障害(MCI)と呼びますが、MCIになってからでも運動すると記憶力が回復する可能性が高くなります。たとえば我が国の国立長寿医療研究センターで平均年齢75歳のMCIの高齢者を対象に行われた研究では、1日90分、週2回の複合的な運動プログラムを6ヶ月実施したグループでは、認知機能と記憶力が明らかに改善し、脳の萎縮も抑えられていました[2]。
有酸素運動が記憶力と脳の大きさを保つ
では、どんな運動が良いのでしょうか。まず第1に習慣づけて欲しいのは、ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車、ダンスなどの有酸素運動です。健康な高齢者120人に1年間の運動指導をしたところ、1回40分、週3回の有酸素運動をしたグループではなんと記憶を保つ脳の部位である海馬のボリュームが2%増えたという報告があります[3]。MCIの女性高齢者でも同様の結果が得られています[4]。「脳は歳をとるほどに縮んでいく」と教えられた経験のある方には驚きの結果だと思います。
その他の運動
筋力トレーニングではどうかというと、こちらは研究によって結果に差がありますが、記憶力や物事に段取りをつけて目的を果たす能力が改善したという研究結果などがあります[5]。一方、ストレッチは関節の柔らかさを維持したり、リラックス効果などは期待できますが、認知症予防や脳の働きの改善にはあまり繋がらないようです。
認知症を予防する運動の目安
まずは軽く汗をかく程度の運動を20分程度、週3回以上行うのを目標に行いましょう。さらに運動をしながら、同時に頭を使うとより効果的です。たとえば、ウォーキングや踏み台昇降をしながら100から3を引き続ける計算をしたり、2~3人でしりとりをしながら歩くなどです。
運動習慣のない人には体を動かすこと始めること自体が大変かもしれません。しかし、家事や通勤も運動の一つです。ほんの少しだけでもよいので、普段から体を動かすことを意識してみましょう。
以上、認知症・アルツハイマー病を予防する運動のしかたでした。食事については下記の記事からご覧ください。
認知症、特にアルツハイマー病を予防するための食事法:3つのポイントを詳細解説
文献
- 1. Rovio S, Kåreholt I, Helkala E-L, et al. Leisure-time physical activity at midlife and the risk of dementia and Alzheimer’s disease. The Lancet [Internet]. 4(11), 705–711 (2005). Available from: http://eutils.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/eutils/elink.fcgi?dbfrom=pubmed&id=16239176&retmode=ref&cmd=prlinks.
- 2. Suzuki T, Shimada H, Makizako H, et al. A Randomized Controlled Trial of Multicomponent Exercise in Older Adults with Mild Cognitive Impairment. PLoS ONE. 8(4), e61483 (2013).
- 3. Erickson KI, Voss MW, Prakash RS, et al. Exercise training increases size of hippocampus and improves memory. Proceedings of the National Academy of Sciences. 108(7), 3017–3022 (2011).
- 4. Brinke Ten LF, Bolandzadeh N, Nagamatsu LS, et al. Aerobic exercise increases hippocampal volume in older women with probable mild cognitive impairment: a 6-month randomised controlled trial. Br J Sports Med. 49(4), 248–254 (2015).
- 5. Ruscheweyh R, Willemer C, Krüger K, et al. Physical activity and memory functions: an interventional study. Neurobiol. Aging. 32(7), 1304–1319 (2011).
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